- 「マッサージしても腰痛がぶり返す…」
- 「いつも腰が重く、筋肉が張っている…」
このようなお悩みで当院に来られる方は後を絶ちません。多くの方が、ご自身の腰痛の原因を「筋肉の硬さ」や「こり」だと考えています。しかし、カイロプラクティックの視点と近年の科学的研究は、そのさらに奥深くにある根本原因を指し示しています。
そのキーワードが、カイロプラクティックにおける「サブラクゼーション」です 。今回は、学術論文(Fryer, Morris, and Gibbons, 2004)を基に、サブラクゼーションが引き起こす腰痛の本当のメカニズムと、カイロプラクティック・アジャストメントがなぜ有効なのかを解説します。
サブラクゼーションとは何か?
カイロプラクティックでいう「サブラクゼーション」とは、単に「骨のズレ」を意味するものではありません 。これは、背骨の特定の分節(関節)が正常な動きを失い、それによって神経系の働きが妨げられている「機能不全」の状態を指します 。
従来、このサブラクゼーションがあると、防御反応として周囲の筋肉が異常に緊張する(筋スパズム)と考えられてきました 。しかし、論文レビューによると、この単純なモデルを支持する直接的な証拠は少なく 、むしろサブラクゼーション周辺では、より複雑な問題が起きていることが分かってきました。
サブラクゼーション周辺で起きている3つの異変
サブラクゼーション(分節機能不全)が存在する部位では、神経系のコントロールが乱れ、筋肉に次のような異常が引き起こされます。
1. 神経の指令エラーによる「深層筋の弱化と萎縮」
背骨を安定させるために最も重要なインナーマッスル「多裂筋」。サブラクゼーションによって神経機能が低下すると、この多裂筋への指令が正常に伝わらなくなります。その結果、
- 活動低下: 腰痛を持つ人の腰部傍脊柱筋は、活動が不十分であることが多くの研究で示されています 。
- 筋力低下と萎縮: 神経からの刺激が減ることで、多裂筋は弱くなり 、最終的には萎縮してしまいます 。これは、痛みがある側の背骨のレベルで選択的に起こることが確認されています 。
2. 神経系の代償作用としての「表層筋の過緊張」
深層筋が「サボって」しまうと、体は不安定になった背骨を支えるために、アウターマッスルである表層筋を過剰に働かせます。これが、皆さんが感じる「腰の張り」や「ガチガチの硬さ」の正体である可能性が高いのです。
これは、中枢神経系(CNS)が痛みや不安定性に対して起こす「防御的な運動戦略」であり 、原因である深層筋の機能不全を解決しない限り、この過緊張は繰り返されます。
3. 触診で感じる「硬さ」の正体
カイロプラクターが触診で感じる異常な硬さ。これは、過緊張の表層筋だけでなく、萎縮した深層筋の上から、その下にある背骨の関節(椎間関節)を直接触れている感覚である可能性も論文中で示唆されています 。つまり、問題の核心は、筋肉の硬さそのものよりも、その背景にある筋肉の萎縮と、それを引き起こした神経機能の低下にあるのです。
カイロプラクティック・アジャストメントの役割
では、カイロプラクティックはこれらの問題にどうアプローチするのでしょうか? その答えが、高速度・低振幅(HVLA)スラスト と呼ばれるカイロプラクティック独自の施術「アジャストメント」です。
アジャストメントの目的は、単に骨を鳴らすことではありません。その真の目的は、
- 関節機能の回復: 動きを失った背骨の関節(サブラクゼーション)に正確な刺激を与え、正常な可動性を取り戻します。
- 神経系のリセット: 関節への刺激を通じて、神経系に強力なフィードバックを送ります。研究では、アジャストメントが運動神経の興奮性(H反射など)を一時的に変化させることが示されており 、これは神経系の働きに直接影響を与えることを意味します。
つまり、アジャストメントは、サブラクゼーションによって断絶されていた「脳と筋肉の間のコミュニケーション」を再確立するためのスイッチを入れる役割を果たすのです。これにより、サボっていた深層筋が再び働き始め、過剰に頑張っていた表層筋の負担が減り、腰痛が根本から改善へと向かいます。
まとめ
あなたの長引く腰痛は、単なる筋肉の問題ではなく、背骨の機能不全(サブラクゼーション)と、それに伴う神経系の機能低下が根本原因かもしれません。
カイロプラクティックは、この根本原因に直接アプローチします。精密な検査でサブラクゼーションを特定し、的確なアジャストメントで神経系の働きを正常化することで、あなたの体が本来持つ回復力を最大限に引き出します。
表面的なマッサージで改善しなかった方は、ぜひ一度、カイロプラクティックの視点からご自身の体を見直してみませんか?
