- 「一度足首を捻挫したら、なんだかクセになってしまった…」
- 「膝がガクッと不安定な感じがする」
スポーツをしている方や、過去に怪我をした経験がある方の中には、このような関節の不安定感に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
湿布やサポーターで一時的に対処しても、根本的な不安定感が解消しないのは、単に靭帯が伸びているからだけではないかもしれません。
実は、そのカギを握るのが、私たちの身体に備わった「固有受容感覚(プロプリオセプション)」というセンサー機能です。
今回のブログでは、なぜ怪我の後にこの「固有受容感覚」が重要なのか、そしてカイロプラクティックがどのように関節の安定性に関わるのかを、専門的な研究(※)に基づいて分かりやすく解説します 。
※本記事は、学術誌『Journal of Athletic Training』に掲載された論文の内容を参考にしています。
あなたの身体の「ナビゲーター」
固有受容感覚とは?
私たちは、目隠しをしていても自分の手足がどこにあるか、関節がどのくらい曲がっているかが分かります。これを可能にしているのが固有受容感覚です。
固有受容感覚とは、関節、筋肉、腱、皮膚などにある「メカノレセプター」と呼ばれるセンサーが、関節の位置、動き、力の入れ具合といった情報をキャッチし、脳(中枢神経系)に伝える感覚のことです 。
この感覚は、私たちがスムーズに動くために不可欠です。
例えば、
- でこぼこした道を歩くとき、足首の角度がどうなっているかを瞬時に脳に報告し、転ばないように姿勢を調整する。
- 歩きながらカバンを持とうとするとき、カバンの重さで身体のバランスが変わることを予測し、適切な筋肉の張り(準備)を指令する。
このように、固有受容感覚は、身体の内部と外部の環境変化に適応し、運動を正確にコントロールするための「ナビゲーションシステム」のような役割を果たしているのです。
怪我で「センサー」が壊れるとどうなる?
問題は、捻挫や靭帯損傷などの怪我をした際、関節を支える靭帯や関節包(関節を包む袋)と同時に、そこにある固有受容感覚のセンサー(メカノレセプター)も損傷してしまうことです。
センサーが壊れたり、情報がうまく伝わらなくなったりすると、以下のような問題が起こります。
- 関節の正確な位置情報が脳に届かない。
- 「これ以上曲げたら危ない」という危険信号が遅れる。
- 結果として、関節を守るための筋肉の反応が間に合わず、再び同じ怪我をしやすくなる(=捻挫がクセになる)。
関節の安定性を守る「筋肉の準備状態」
では、関節の安定性を高めるにはどうすればよいのでしょうか。
一般的には「関節がグラグラするなら、周りの筋肉を鍛えればいい」と考えがちです。もちろん筋力も重要ですが、それだけでは不十分かもしれません。
研究によれば、関節の安定性には、筋肉の「Stiffness(スティフネス=剛性)」が非常に重要であるとされています。
これは、筋肉がカチカチに「硬直」している状態とは異なります。
むしろ、不意の衝撃に備えて、適度な「張り」や「バネ」を持って準備している状態とイメージしてください。
なぜ「準備状態」が重要なのか?
- 関節を直接守るStiffness(剛性)が高い筋肉は、急な関節への圧力(捻挫しそうになる瞬間)に対して、より効果的に抵抗することができます。これにより、関節が危険な範囲まで動いてしまうのを防ぎ、怪我の発生を減らすことが期待できます。
- 反射をスピードアップさせる筋肉が適度に張った「準備状態」にあると、筋肉内にある別のセンサー(筋紡錘)も敏感になります。これにより、危険を察知してから筋肉が収縮するまでの反射の「タイムラグ」を短縮させることができます。
「準備状態」と固有受容感覚の関係
そして、この筋肉の「準備状態(Stiffness)」を高める指令を出しているのが、メカノレセプターからの固有受容感覚なのです。
論文では、関節のセンサーが「ガンマ運動ニューロン」という神経を活性化させ、それが筋肉のセンサー(筋紡錘)の感度を高める、という流れが指摘されています。
つまり、こういうことです。
- 怪我で関節のセンサー(固有受容器)が損傷する
- 脳への正確な情報が減る
- 筋肉の「準備状態(Stiffness)」を高める指令がうまく出なくなる
- 急な衝撃に抵抗できず、反射も遅れがちになる
- 結果:関節が不安定になり、怪我を繰り返す
カイロプラクティックが神経と関節のセンサーにアプローチする理由
カイロプラクティックは、単に骨格の歪みを整えるだけではありません。その主な目的は、背骨や各関節の機能異常(サブラクセーション)にアプローチし、神経系の働きを正常化することにあります。
関節の動きが悪い、あるいは位置がズレている状態では、そこにある固有受容感覚のセンサーは正しい情報を脳に送ることができません。
カイロプラクティックケアによって関節の機能や動きを改善することは、この「センサー機能」をリセットし、活性化させることにつながります。
「入力(センサー情報)が変われば、出力(筋肉への指令)も変わる」
私たちは、神経系の「情報の流れ」を最適化することを目指します。
関節からの固有受容感覚という「入力」を整えることで、脳が正しい判断を下し、筋肉の「準備状態(Stiffness)」を高めるという適切な「出力」ができるようサポートするのです。
まとめ
捻挫などの怪我がクセになる背景には、靭帯の緩みだけでなく、関節のセンサーである「固有受容感覚」の機能低下が隠れています。
このセンサーがうまく働かないと、関節を守るための筋肉の「準備状態(Stiffness)」が低下し、再受傷のリスクが高まります。
もし、あなたが繰り返す怪我や慢性的な関節の不安定感でお悩みなら、それは「神経系のセンサー機能」がうまく働いていないサインかもしれません。
当院のカイロプラクティックケアで、その根本原因にアプローチしてみませんか?
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